2024年に映画館で見た映画で印象に残った映画のまとめです。
カラオケ行こ!
1月27日視聴
予告編を見て低予算のコメディ映画だと思ってたからそこまで期待していなかったけど、綾野剛が紅を熱唱しているのとレビューが異常に良かったので観に行ったら感動して泣くぐらい面白かったし、コメディとしても面白かった。
歌を歌っているシーンとかも多いし映画館のいい音響で見れてよかった。
普通にもう一回観に行きたくなるくらい面白かった。
2024年に見た邦画の中で一番印象に残った。
あらすじ
中学校の合唱部の部長を務める岡聡実はたまたま合唱コンクールの会場の歌声に惹かれて岡聡実の歌声を聞いたヤクザに歌を教えてくれと頼まれる。
感想
設定も序盤の流れもシュールコメディーで、合唱コンクールに出るような真面目な中学生をヤクザのめちゃくちゃ怖い感じのおじさんが「カラオケ行こ」って誘うという導入で一気に引き込まれた。カラオケ行ってからのシーンでどうしてカラオケに誘ったのか、歌の練習をするのかをちゃんと説明してくれるし、意味わからないくらい変な理由なのに真面目に練習する気持ちもわかるくらいカラオケ大会で負けたくないのが伝わってきてかなりシュールで面白かった。
聡実君は聡実君で声変わりで特異なソプラノの音域が出なくなってきていることを気にしていて、合唱コンクールで3位になってしまったのも自分のせいだと思い詰めていて部活もサボりがちになって幽霊部員として名義だけ貸してる映画を見る部に行って友達と映画を見ながらヤクザのおじさんのことを相談したりしている。このシーンが何回も出てくるけど、その会話のシーンが思春期の悩みみたいなのを真面目に描いていて青春ものとしても丁寧な作りになっている分、まじめでおとなしい中学生にヤクザが真面目に歌について教えてもらうシーンとのギャップで面白かった。最初の成田だけじゃなくてほかのヤクザもいっぱい集めて一言ずつ批評していくシーンは、カットのテンポの良さとヤクザの各々の個性的な選曲と歌い方と聡実君の一言が辛辣かつ的を射た指摘になっていて気持ちよかった。
合唱コンクールのシーン以降は聡実君は声変わりせいで今まで通りうまく歌えないことが嫌で歌うシーンが一切なかったけど、成田が真面目に練習する姿に影響を受けて部活で歌う最後のチャンスの合唱祭に行くことを決めるシーンで母親に「うまく歌えへんかもしれんけど」って言うのが聡実君の精神の成長を描いていて良かった。
決意して合唱祭の会場に向かう途中で成田の車が事故しているのを見て成田のことが心配になり合唱祭を抜け出してヤクザのカラオケ大会に向かうシーンとか青春映画そのものだったし、ヤクザの組長に詰め寄るシーンも感動的だった。最後に組長に歌っていけって言われて初めて聡実君が成田に向けて紅を歌うシーンはめちゃくちゃ歌声がきれいなのに高音のところきつそうに一生懸命歌っていて感動的だった。紅の歌詞の意味を調べるシーンが途中であったこともあって鎮魂歌として気持ちを込めて歌っているのが伝わってきたし、ヤクザが泣いているのも良かった。歌い終わった後に成田は無事でトイレに行っているだけだったのにヤクザの悪ふざけでだまされていただけだったって分かるシーンも組長がふざけてて面白かったし愛嬌があった。
最後、卒業式の際に映画部の友達にヤクザの事務所があるあたりが無くなって、でかいホテルが建つことを知らされて、紅の歌詞の最初の英語の部分の和約を口ずさみながら誰もいなくなった思い出の場所を巡っていくシーンは泣きそうだった。
最後、成田が電話する後ろ姿で腕に聡実って入れ墨を掘られていて、カラオケ大会で負けたことが分かるのと、また聡実君をカラオケに誘うオチがとてもよかった。カラオケ大会で負けたら嫌いなものの入れ墨を組長に手彫りされるから好きなものを嫌いと言っておくと好きなものを掘ってもらえるからまだマシって会話がちゃんと回収されていて良かった。
参考
カラオケ行こ! : 作品情報 - 映画.com
映画『カラオケ行こ!』公式サイト
哀れなるものたち
2月11日視聴
去年見た映画の中で1,2を争う位印象的な映画だった。
あまりアート寄りの映画は好きではないから予告編で少し合わないかもと思ったけど、抽象的な表現もあるけど全然アート映画じゃなくてすごく面白かった。
ヨルゴス・ランティモス監督のことを知らなかったけどめちゃくちゃ好きになった。
あらすじ
風変わりな天才外科医ゴッドウィン・バクスターは自ら命をたった妊婦のベラの死体を見つける。胎児の脳をベラに移植することで奇跡的に蘇生する。子供のような行動をとるベラは急激に成長を遂げていき、「世界を自分の目で見たい」という強い欲望にかられた彼女は、放蕩者の弁護士ダンカンに誘われて大陸横断の旅に出る。
感想
最初は画面の比率も4:3かつ白黒で中世のヨーロッパっぽい雰囲気だったから中世のヨーロッパを舞台に天才外科医ゴッドウィン・バクスターだけが知識や技術力を持ったSFものかと思ったら、ベラが外に出てからはカラーになるし画面比率が16:9になって全然違うかった。
序盤のベラが外に出るまでの雰囲気と流れがすごく好きだった。予告編で流れていた変な音楽が冒頭の映像とめちゃくちゃあっててすごく好きだった。最初の方はクライムズオブザフューチャーみたいな雰囲気ですごく好きだった。
ベラが駆け落ちして外に出てからは外の世界観が予想外でちょっと戸惑った。途中セックスが多すぎるけど、どんどん賢くなっていくベラの言動がどんどん哲学的になってきて面白かった。
何が面白かったのかよくわからなかったけど、すごく面白かった。
参考
ボーはおそれている
2月24日視聴
哀れなるものたちといいこの作品といいめちゃくちゃな映画が年始から続いていて今年はどんな年になるんだって心配になった。
ホアキン・フェニックスはジョーカーのイメージしかなかったけど、太りすぎてて予告編では一目でわからなかった。
3時間あるのと事前の評判があまりよくなかったから少し覚悟して観に行ったけど、体感1時間くらいに感じるくらい面白かった。
理解できなかったシーンとか細かすぎてよくわからないシーンとかあったけど、全体的に面白かった。
あらすじ
些細な事でも不安なってしまうボーは直前まで電話していた母が突然、怪死したことを知る。
母のもとに駆け付けるために出かけるが奇妙な出来事が次々に起こる。
感想
冒頭のカウンセリングのシーンだけがまともで主人公が住んでいる地域がくそほど意味わからないくらい荒れていて、ボーがお母さんが死んだ報告を受けて不思議な旅に出るって感じではなくてひたすら意味わからない世界観で意味わからない行動原理で動いていてついていけなかった。
最終的に母親が息子の自分への愛を確かめるために仕組んでいたことが分かるけど、最初の寝ようとしているときに音がうるさいてて苦情入れられるシーンと荷物とカギを盗まれるシーンだけは母親の仕掛けなのかわからなかった。母親がボーが嘘を付いているような起こり方をしているから本当にただのトラブルにしては不幸すぎる。
車にひかれて医者の夫婦の家で保護してもらうけど、明らかに家庭がおかしいし妻の方がテレビを見るように勧めてボーが監視されていることを教えてくれるシーンは親切心なのか不安感を煽るためなのかわからなかったけど、あそこからひたすら不気味な雰囲気が増して言って面白くなっていた。
医者の家から逃げた後の森の劇団の劇がアニメーションと組み合わせられていて不気味な雰囲気がすごかった。パンフレット見たらアニメーションの担当が話題になった「オオカミの家」の人がやってるらしくて不気味かつきれいだったし話として面白かった。全体を通して一番わかりやすかった。
最後に家に着いてからは今までのシーンの説明するようなシーンが続いてやっとストーリーが飲み込めた。ただ演出が細かすぎてそこまで気付けないだろってシーンが多かった。母親の会社の従業員の顔写真を使ったモザイクアートの中にボーが作中で関わってきた人の顔が全員分あるって全部母親が仕組んでいたことって分かるシーンとかヌルっと流しててわかりづらかった。
母親が出てきてからはより意味わからないシーンが増えた。ずっと仕えてくれていたメイドを殺してボーが帰る理由を作って行動を監視するみたいなのは狂気がすごいし面白かったけど、セックスした女がなぜか急に死ぬのもよくわからないし、屋根裏の閉じ込められている男(双子?)がいてずっとトラウマになっていた悪夢が現実だったのが分かるのはいいとして急にちんこの化け物が出てくるのがよくわからなかった。父親が性欲にとらわれていることを示唆しているのかもしれないけど意味わからなかった。
最後のボートに乗って裁判みたいにこれまでの行動を映し出されて罪深い人間かどうかを判断されるシーンは面白かったし一番好きなシーンだった。明らかにボーが悪くないけど、見方によっては確かに悪意のあるような行動にとらえるし、母親から見たら自分が与えた愛に答えてくれていないと感じて憤慨して最終的に爆発して終わるのがよかった。転覆したボートが移されたままエンドロールに写るのも良かったし、地味に裁判を見ていた観客が帰って行ってるところを描いているのも地味に好きだった。
参考
ボーはおそれている : 作品情報 - 映画.com
映画『ボーはおそれている』公式サイト|絶賛上映中
毒娘
4月27日視聴
ポスターがかっこよかったし、キャラクターデザインが押見修造って知ってずっと気になってたから観に行ってきた。
キャラクターとストーリー展開がすごく好きだったし、かなり好きなシーンも多かった。
特に序盤のコーラの吹っ飛び方が最高だった。
あらすじ
子持ちの男性と結婚した萩乃は新しい一軒家に引っ越して、夫の連れ子の萌花と仲良くなろうとコミュニケーションを取りながら夫の顔色をうかがいながら生活する。
ある日外出中に萩乃のもとに萌花から助けを求める電話がかかってきて慌てて帰ると家は荒らされていて、知らない女の子が萌花に馬乗りになってハサミを突き付けていた。
感想
ストーリーはあんまり内容がないけど、全体的に好きな雰囲気だった。毒娘っていうか普通に毒親と毒親に育てられた子供の話だった。タイトルのロゴとロゴの出方がめちゃくちゃかっこよかった。ちーちゃんが脅威として萌花に写っているシーンでは怖い音楽が流れて萌花が心を許した瞬間に爽やかな音楽に変わってBGMの使い方も印象的だった。
序盤の萌花とママの距離感とママが萌花に気を使いながらも仲良くしようとしている感じとか、萌花も自分があこがれている職業をやっていたママのことが少し気になっているけど心は開けていなくて「ママさん」って呼んでいる雰囲気とか好きだった。ご近所の萌花と同級生の子供を持つ奥さんがそこまで親しくないのに本業で衣装のデザインしているママに依頼してくる感じがムカついたけど、萌花ちゃんのために引き受けた上に自分からはアイデアは出さずにどうしたいかを聞いて適度にアドバイスしている感じがとてもよかった。すごく二人の関係性が良くて仲良くなっていくんだろうなって演出とストーリー展開なのに、途中ですごく不穏な音楽とともにちーちゃんが窓からのぞいていたり、見栄っ張りでモラハラ気質って一瞬でわかるくらいウザイ旦那のお願いに断り切れないママの感じとかが出てきて少しずつストレスと不穏な雰囲気が漂い始めたくらいで一気にちーちゃんが萌花を襲ってホラー映画って感じになった。ママ役の人の顔がひどい目にあわされているけど明確に意思表示できない人顔すぎて出てきた瞬間から不幸な目に合うんだろうなって感じだったけど、思っていたよりシンプルなモラハラでしんどかった。
萌花がちーちゃんに襲われているシーンは襲い方も怖いし家のぐちゃぐちゃ加減もすごかったけど、ちーちゃんのケーキの食べ方とコーラの飲み方がすごくよかった。特にコーラを一口飲んで投げ捨てた後の吹っ飛び方が芸術的だった。このシーンだけ何十回も取り直したんじゃないかってくらいきれいに萌花たちの方に吹っ飛んで行っててすごかった。飲み口が下の状態で着地するように投げるの自体難しいはずなのに、その上萌花たちの方に吹っ飛んでいくのが印象的過ぎてこれを演出としてやっているとしたらめちゃくちゃすごいと思った。コーラを一口飲んで投げ捨てるだけでもハチャメチャ感が出るけど、コーラが萌花たちの方に飛んで行っていることで萌花たちも驚いているしよりちーちゃんのハチャメチャ感が出ていて良かった。このコーラのシーンだけでも何回でも見たいくらいコーラの吹っ飛び方が好きだった。あんなに芸術的にコーラが吹っ飛ぶことなんてあるんだ。あのコーラのためにもう一度最初から観たい。
最初は萌花も心を開きそうなくらい良いママで萌花も楽しそうだったけど、モラハラ夫の言いなりのママへの不信感とちーちゃんに子供を作ろうとしていることをばらされてからの萌花のグレ方が毒親持ちに刺さる感じのグレ方だった。ちーちゃんも詳しくは描かれていないけど、おそらくネグレクトされていて親に完全に放置されている感じだったから、親が信用できない子供たちで仲良くなってしまう感じがリアルだった。衣装作ってってお願いしてきた子も最初はウザそうだったけど、ちーちゃんと関わらないほうがいいよって萌花を気にかけているような発言もあるし、ちーちゃんに襲われた後も萌花とちーちゃんが仲良くしているのを隠していたりいい人だった。
途中のマークを考えたり部屋で二人で遊んだりするシーンは完全に青春ものだし、ちーちゃんがもう少しリミッターがあったら普通にハッピーエンドもあった感じだったけどぶっ壊れすぎてた。家出後に服を赤に染めたりメイクしたり死んだママが作ってくれてた冷凍食品を食べたり、ママが好きだったワインを飲んで思い出をちーちゃんに話すシーンとかすごく感動的で二人の仲の良さが出てた。
家出した萌花を探し回った後に家に帰ったらめちゃくちゃぐれた萌花がワインを瓶で飲んでるシーンはクソかっこよかった。明らかにパパの方が悪いのにママの方が悪いと思い込んで殺そうとする萌花に寄り添って、モラハラ夫に反抗するママのシーンはかっこよかった。ちーちゃんが強すぎるのと殺意が高すぎて的確にパパを殺すのが怖いを超えて面白かったしスッキリした。
ラストの新しい住民を毒ガスで一網打尽にするちーちゃんがかっこよすぎるし殺意が強すぎて良かった。萌花のその後もちーちゃんのその後も気になるし、ちーちゃんや周りの子供たちを掘り下げたスピンオフ作品とかも見てみたい。
参考
デッドストリーム
8月26日視聴
去年のダッシュカムといい毎年こういうPOVの映画出してほしい。めちゃくちゃ面白かった。
Jホラー的なじわじわ怖いのじゃなくてガッツリクリーチャーと戦う系だしジャンプスケアもほとんどなかったから、すごく見やすかったしもっといろんな人に見てほしい。
人にPOVお勧めするときにちょうどいい映画かもしれない。
あらすじ
炎上系配信者のショーンが過激過ぎる企画が原因でアカウント停止になり、スポンサーも離れてしまう。名誉挽回をかけた規格として、呪われた館とのうわさがある廃墟でライブ配信をする。
感想
最初の海外のYoutuberがやりそうな編集が本当にありそうだった。最初のYoutubeパートが主人公のキャラクター紹介とあらすじ紹介を兼ねていて導入が見やすかった。
あらすじから去年くらいにやってたダッシュカムに似てるなと思ってたけど全く路線が違った。ホラーをベースとしたコメディでちゃんと怖い要素はあるけど、主人公の反応や対応が全部コメディで面白かった。生配信って設定だったけど、コメントはほとんど映ってなくて主人公が視聴者と会話するシーンだけ表示されて、主人公が反応しているコメントだけが字幕で表示されていたから字幕を追うのもそこまで大変じゃなかった。POVだとBGMがないことがほとんどだけど自分で作ってカセットテープで流してて雰囲気に合ってたしよかった。モキュメンタリーだとたまにBGM入ってることあるけどファウンドフッテージでBGMが自然に入っててしかも効果的に使われてるのは初めて見た。
幽霊系じゃない分クリーチャーの造形とかはとてもよかった。グロも少しあって昔のクリーチャー系のホラーが好きな人も楽しめるような内容だった。
戦うって決めてからは手持ちのもので武器を作ったり、応急処置をダクトテープでしたり困ってからの対応がいちいち面白かった。
参考
サユリ
9月1日視聴
最初のホラーパートは原作通り怖くて、途中からは白石晃士ワールドでおばあちゃんが大暴れしてて最高だった。
原作好きな人も白石晃士監督好きな人もどちらも楽しめる最高の映画だった。
あらすじ
念願の一軒家を中古で購入した神木家は引っ越しの片付けなどをしながら新生活に期待を膨らませる。しかし、引っ越してから不思議な現象が起こり始める。最初は引っ越しの疲れや環境の変化のストレスかと思っていたが、明らかにおかしな現象が起こり次第に家族が不審死し始める。
感想
俳優さんの顔が何となく原作に似てる人を選んでいて、原作の絵柄が写実的ではないのにすごく違和感なかった。こんなに似てる人たち集められるんだって思ったし、表情とかも原作の雰囲気そのままだった。
最初の怪異が起こるまでがテンポいいし家族構成や家の構成とかいろいろ必要な情報が分かりやすくまとめられててすごく見やすかった。ホラーパートが始まってからは王道なホラーの演出でちゃんと怖かったし、少しずつ取りつかれていく感じが怖かった。ただ、原作よりサユリに家庭を壊されていくのが短時間で描かれていて原作の方が絶望感とかサユリに対する憎しみは薄く感じた。
おばあちゃんが覚醒してからはいつもの白石晃士作品って感じでめちゃくちゃ安心して見れた。おばあちゃんが幽霊対策で言ってることって意外と芯を食ってそうだし日常生活を送るうえで普通に大切なことばっかり言っていて、意外と幽霊対策としては間違ってなさそうって思った。
サユリのビジュアルが子供の頃の姿はイメージ通りだったけど、原作にはなかったお父さんにレイプされている描写とか、成長してからの見た目が太って汚い感じにされているのはあまりよくわからなかった。サユリが襲うときに原作はバットだったのにバールに変わってるのも地味に気になった。原作を見た時に金属バットで暴れる感じとかが好きだったから特に気になった。
原作に無かった要素とか演出は白石晃士ファンが喜ぶこと全部やってくれた感じがあってすごく楽しめた。最後のサユリを倒す演出はあまりにもショボくて白石晃士初見の人とかは戸惑うだろうなって思いながら観てた。
参考
憐れみの3章
10月13日視聴
意味が全く分からなかったけど、クソほど面白かった。
哀れなるものたちで始めてヨルゴス・ランティモス監督の映画を見て今回が2作目だけどかなり好きな作風かもしれない。
演出や音楽の使い方すごくいい。音楽単体でもいい曲が多いけどシーンにマッチしていて登場人物の感情を表現するのに効果的ですごく印象に残った。
あらすじ
意味わからん過ぎてあらすじ書けない。
同じキャストが3つの別々の物語を演じる。
感想
意味わからんけどクソ面白かった。
一つ目の話が普通に好きで面白かった。強大な権力者の無茶な要望から自ら逃げたつもりでいた主人公が実際に離れて見たら与えられた生活を失うのを恐れたり、自分で選択することができないことに悩んだり依存していたことに気付いて自ら戻るために人を殺すのがシリアスな意味でも面白かったし殺すときに無駄にドリフトしながら勢いよく無駄に2回も轢くのが面白かった。地味にクスッとするシーンが全体的に多かった。
2つ目の物語はあまりハマらなかったけど、妻がいなくなった主人公を同僚とその妻が励まそうと一緒に食事しに来たシーンでいきなり4人でセックスしている映像を見始めるは普通にイカれてて面白かった。妻が帰ってきて妻が別人かもしれないって気付いてからはただの統合失調症って感じで少し辛かった。最後に主人公の命令通りに自分の肝臓を取り出して死んだ後に本当の妻が帰ってくるのがよくわからなかった。
3つ目の話は分かりやすく宗教に依存している二人が、教祖の命令通りにひたすらに力を持っている女の子を探していて設定が分かりやすくて見やすかった。ずっと何の説明もなくエマ・ストーンの運転が異常なほど荒くて常にベタ踏みドリフトしてて運転シーンが常にじわじわ面白かった。設定が分かりやすかったから疑問とかモヤモヤなくシュールなコメディーシーンを楽しめた。最後のスタッフロール越しの勝確ダンスが最高だったしひたすらに運転も荒くて面白かった。
最後に3つのストーリの主語になっていたR・M・Fが3つのストーリーで地味な役をやっていたおっさんだったっていうのをばらして「お前かよ」ってクスッてした。しかもR・M・Fがそれぞれの物語で主人公たちに影響を与えるような役だから何かのメタファーのようにも考えられるから考察のしようがあってすごくよかった。2つ目の物語でちょっと心おれそうだったけど、最後まで見た時の満足感がすごかった。
現地のポスターデザインも日本版のポスターデザインもすごくよかったから販売してほしい。
参考
Cloud クラウド
10月18日視聴
ほとんど事前知識なしに黒沢清監督って知識だけで観に行ったけど面白かった。
転売屋の嫌な部分と転売屋で成功して調子乗ったら失敗した人の表現とかがすごくよかった。
主人公の高専の先輩の見下し方や先輩の家の荒れ方がすごくよかった。
あらすじ
工場で働きながら転売屋をしている吉井は転売で儲けた金を元手に働いていた工場をやめて、地方の大きな一軒家を借りて彼女と同棲しながら転売一本の生活を始める。
転売のための買い占めや工場の上司に打診された昇進を断ったことや転売について教わった先輩からのもうけ話を断ったりなどでいろいろな人に恨まられていく。
感想
序盤の少しずつ恨みを買って行って人間関係が崩壊していく感じや誰かに狙われているような描写が増えていくのが不穏で怖かった。
引っ越しの時も主人公がうまく行っている感を出しながらもどんどん不穏がシーンが増えていって怖かった。急に車の部品を家に投げ込まれるシーンとかびっくりした。
襲われてからはめちゃくちゃアウトレイジみたいだった。一般人なのにやりすぎだろってくらい殺意高かった。拷問の仕方とか普通の人が思いつかないようなレベルの準備をしてて逆に笑ってしまった。
違和感を感じるシーンが多かったアシスタントの佐野君がまさかの裏の組織と関わってるっぽくて銃を持って全員殺していくのはまさかの展開でちょっとついていけなかったけど面白かった。序盤の方で車の部品を投げ込んだ犯人が異常なほど怖がってたのとか地味に伏線だったんだなって気付いた。
ネットでラーテルを殺すために集まった集団が過激なことをしてはいるけど結局本職の佐野君には全然かなわなかったり、調子に乗ってたりするけど身の丈以上のことはできずに隙を見せて殺されていく感じが好きだった。
最後に佐野君がひたすら下から話してくるけど、ラーテルの名前の由来を「世界で最も恐ろしい生物のことですよね?」って聞かれてそうだよって答えたら「流石だなぁ」って言われるのが完全に格付け完了って感じで絶望感あったし、主人公の地獄の入り口かぁってセリフがすごくぴったりだった。佐野君が明らかに裏の世界の人で目的もわからないのが怖いけど、佐野君から逃れようとすると明らかに同じような人たちに狙われるのが見えてるから逃げられない絶望感があるラストですごくよかった。
参考
エストニアの聖なるカンフーマスター
10月27日視聴
劇場で見てよかった。
感想
完璧に求めていた映像を見せてくれている。
最高の映画。ただストーリーが気が狂ってる。わからない。でも好き。
ストーリー以外減点する要素がない。
ポスターになってるシーンが最高だった。
動物界
11月30日視聴
予告編や設定だけを見て見に行ったら期待外れに感じる人も多そうな内容で、実際にレビューもかなり割れていた。すごく非現実的な設定でジャンルとしてはファンタジーともとれるが、ストーリーの本質としては親子愛だったり、家族が不治の病になった際の家族の心境をメインで描いたヒューマンドラマだった。
全体的に非現実的な出来事なのに現実の社会問題と被る部分があって、受け手の登場人物の反応とかも当事者の悩みだったり拒否感や不安感をうまく描かれていて、現実の問題かのように受け取れて登場人物に感情移入出来て、ラストの親子の選択も正しかったのか、自分ならどうするか考えさせられる内容だった。
あらすじ
原因不明の突然変異により、人間の体が徐々に動物なっていく奇病が世界的に蔓延し、社会が混乱と病気への向き合い方について議論されているが未だ明確な治療法や向き合い方が見つからないままでいる。
病気になって動物化した人々のことを「新生物」と呼ばれるようになり、狂暴性を持つため病院に隔離される処置がされておりフランソワの妻のラナも隔離されているため、月に一回息子のエミールと一緒に面会に行っていた。
ラナが新しい施設に移動することになりフランソワたちも引っ越すが、移送中に新生物たちを乗せたバスが事故にあい、多くの新生物達が森に放たれてしまう。
ラナに探すフランソワとエミールだったが、エミールにも体に変化が起こりはじめる。
感想
設定がかなりファンタジーなのにストーリー展開も演出も限りなくリアルに描かれていた。人間が動物になるという設定をもとに動物との共存や家族愛、思春期の体の変化への戸惑い、家族の病気で人格が変わってしまった親子の心境を描いていて、ストーリー展開や心理描写がすごくわかりやすく直接的な描写で設定のファンタジーが苦手な人でも普通のヒューマンドラマとして楽しめるような内容になっていた。
クマの見た目になって意思疎通出来ているか変わらない母親に対して困惑し同じ母親として見れないエミールの心の葛藤や、自分が新生物になっていく兆候を見つけて絶望する姿が遺伝性の病気に苦しむ人たちの姿に重ねてしまうからファンタジー設定の病気なのにすごく感情移入できるし現実の問題として見ることができた。
フランソワは妻のラナについて真剣に向き合っているがゆえに息子のエミールの気持ちをあまり考えられずに強く当たったり、悩みに気付けなかったりするところも家族が実際に難病にかかった人たちの姿をリアルな演出で見せていて苦しくなった。政府の対応に関しても当事者のフランソワたちと、暴れる新生物たちに不満や恐怖を持っている人たちとの温度差もすごくリアルだった。
ずっと新生物になった母親を受け入れられずに高校の同級生に死んだと伝えていたエミールが自分が同じ病気になったことで新生物たちを同じ人間として見れるようになって、父親のフランソワの行動にも理解を示したり、父親の優しさを感じられるようになったシーンは少しほっこりした。フランソワも妻のラナの方に目を向けすぎていたことに気付いてエミールも献身的にサポートしようとする姿がとても暖かくて良かった。
エミールがフィクスの飛ぶ練習を手伝うシーンは少しずつ新生物が人間から動物になっていく過程や思考の変化や苦しみを表現されているけど、エミールとフィクスが友情を深めていく演出が青春ドラマみたいで見やすかった。新生物同士の友情みたいなものも描かれていて新生物にも社会性だったり人間性みたいなのがあることが分かってより新生物の見方をしているフランソワたちに感情移入できた。
お祭りでの恋人とのやり取りやウザイクラスメイトに嫌がらせされてエミールが追われる立場になるのは少し駆け足な展開にも感じたけど、そこから森で新生物だけのコミュニティーを見つけてエミールが嬉しそうにするシーンはとてもよかった。ラストの車で一緒に森に向かうときに昔の家族旅行の時の笑い話を二人でするときに物語の序盤にあった家族間のいざこざが無くなって純粋に子供の幸せを願う父親と信頼している子供になっていて対比がすごく印象的だった。