11月30日
映画館で視聴
ネタバレあり
予告編や設定だけを見て見に行ったら期待外れに感じる人も多そうな内容で、実際にレビューもかなり割れていた。すごく非現実的な設定でジャンルとしてはファンタジーともとれるが、ストーリーの本質としては親子愛だったり、家族が不治の病になった際の家族の心境をメインで描いたヒューマンドラマだった。
全体的に非現実的な出来事なのに現実の社会問題と被る部分があって、受け手の登場人物の反応とかも当事者の悩みだったり拒否感や不安感をうまく描かれていて、現実の問題かのように受け取れて登場人物に感情移入出来て、ラストの親子の選択も正しかったのか、自分ならどうするか考えさせられる内容だった。
あらすじ
原因不明の突然変異により、人間の体が徐々に動物なっていく奇病が世界的に蔓延し、社会が混乱と病気への向き合い方について議論されているが未だ明確な治療法や向き合い方が見つからないままでいる。
病気になって動物化した人々のことを「新生物」と呼ばれるようになり、狂暴性を持つため病院に隔離される処置がされておりフランソワの妻のラナも隔離されているため、月に一回息子のエミールと一緒に面会に行っていた。
ラナが新しい施設に移動することになりフランソワたちも引っ越すが、移送中に新生物たちを乗せたバスが事故にあい、多くの新生物達が森に放たれてしまう。
ラナに探すフランソワとエミールだったが、エミールにも体に変化が起こりはじめる。
感想
設定がかなりファンタジーなのにストーリー展開も演出も限りなくリアルに描かれていた。人間が動物になるという設定をもとに動物との共存や家族愛、思春期の体の変化への戸惑い、家族の病気で人格が変わってしまった親子の心境を描いていて、ストーリー展開や心理描写がすごくわかりやすく直接的な描写で設定のファンタジーが苦手な人でも普通のヒューマンドラマとして楽しめるような内容になっていた。
クマの見た目になって意思疎通出来ているか変わらない母親に対して困惑し同じ母親として見れないエミールの心の葛藤や、自分が新生物になっていく兆候を見つけて絶望する姿が遺伝性の病気に苦しむ人たちの姿に重ねてしまうからファンタジー設定の病気なのにすごく感情移入できるし現実の問題として見ることができた。
フランソワは妻のラナについて真剣に向き合っているがゆえに息子のエミールの気持ちをあまり考えられずに強く当たったり、悩みに気付けなかったりするところも家族が実際に難病にかかった人たちの姿をリアルな演出で見せていて苦しくなった。政府の対応に関しても当事者のフランソワたちと、暴れる新生物たちに不満や恐怖を持っている人たちとの温度差もすごくリアルだった。
ずっと新生物になった母親を受け入れられずに高校の同級生に死んだと伝えていたエミールが自分が同じ病気になったことで新生物たちを同じ人間として見れるようになって、父親のフランソワの行動にも理解を示したり、父親の優しさを感じられるようになったシーンは少しほっこりした。フランソワも妻のラナの方に目を向けすぎていたことに気付いてエミールも献身的にサポートしようとする姿がとても暖かくて良かった。
エミールがフィクスの飛ぶ練習を手伝うシーンは少しずつ新生物が人間から動物になっていく過程や思考の変化や苦しみを表現されているけど、エミールとフィクスが友情を深めていく演出が青春ドラマみたいで見やすかった。新生物同士の友情みたいなものも描かれていて新生物にも社会性だったり人間性みたいなのがあることが分かってより新生物の見方をしているフランソワたちに感情移入できた。
お祭りでの恋人とのやり取りやウザイクラスメイトに嫌がらせされてエミールが追われる立場になるのは少し駆け足な展開にも感じたけど、そこから森で新生物だけのコミュニティーを見つけてエミールが嬉しそうにするシーンはとてもよかった。ラストの車で一緒に森に向かうときに昔の家族旅行の時の笑い話を二人でするときに物語の序盤にあった家族間のいざこざが無くなって純粋に子供の幸せを願う父親と信頼している子供になっていて対比がすごく印象的だった。