8月17日
映画館で視聴
ネタバレあり
前半パートはモキュメンタリーの短編集のような感じでモキュメンタリーが苦手ではない人なら楽しめる内容になっていた。特に関係のなさそうな映像や記事に少しずつつながりが見えてくるシーンではすごく不気味な怖さがあった。
後半は白石晃士監督作品という感じで好き嫌いが別れると思うし、実際レビューサイトでも賛否両論って感じだった。
ただ前半は普通にホラー映画として観ても不気味な怖さがあって邦画のホラーが好きなら楽しめると思う。
詳細
- タイトル:近畿地方のある場所について
- 監督:白石晃士
- 2025年製作/日本
- 上映時間:103分
- 劇場公開日:2025年8月8日
あらすじ
オカルト雑誌の編集者が次回の特集を他の編集仲間に内緒で執筆中に行方不明になる。このままでは雑誌の特集に穴をあけてしまうことになるため同僚の編集者の小沢悠生はオカルトライターの瀬野千紘を頼り、行方不明の編集者を捜すために彼が集めた特集のための資料を調べていく。
感想
導入はオカルト雑誌の編集者が会社の地下で特集のために泊まり込みで作業をしていて、たまたま残業していた主人公の一人の小沢に話しかけられて体調を心配されたり特集について聞かれたりするよくあるような導入だった。ただ地下に戻ってから明らかに雰囲気が一変して細かい怪異が起こって不穏な空気になって変わり果てた姿になった自分の霊体のようなものが現れ目から出血して顔がアップになったら目が空洞になっているのはインパクトがある演出でそのままタイトルに入ってすごく引き込まれた。
序盤はよくある邦画ホラーの導入って感じで編集者が失踪したからコネクションのあるフリーのオカルトライターに特集の執筆の手伝いをお願いして失踪した編集者が集めた資料を基に事件について調べていくうちに怪異に巻き込まれるという展開でわかりやすかった。
基本的には無関係に感じるような映像をいくつも見ていく形で話が進んで行ってストーリーの本筋が分かりやすい分一個一個の映像が不気味なだけで一見関係の無いような映像の羅列でも失踪事件と特集にどのような関係があるのか自然と推理しながら観てしまった。どういう関係があるのか見逃さないように細かい部分まで見てしまって他の映像との一致している部分などを見つけるとどんどん恐怖が蓄積していってどんどん不気味な事件に巻き込まれているような感覚があった。
ストーリーが進むにつれて霊や怪異が少しずつ起こっていくのも取り返しのつかない方向に進んでいるような怖さがあった。
資料のほとんどがVlogやテレビの映像だったり過去の取材映像一個一個が短編のモキュメンタリーみたいになっていての短編集のような感覚でも楽しめて面白かったし、取材資料として残っていたという設定だけあって、映像に映っていた人物の顛末などについて資料が一緒に保存されていて何気ない昔のテレビ番組の映像でそれ単体では怖くなくても一連の顛末が本筋の怪異につながっていることが分かってどんどん危険に近づいていっている感覚がとても不気味な雰囲気で不快感すらある怖さだった。
一個一個の資料映像は白石晃士監督の作品だけあって実際に放送されていたんじゃないかってくらいリアルだった。特に失踪したニコ生主の首吊り屋敷は本当に廃墟自体が怖くて、ただ腐敗しているから怖いといった普通の廃墟の怖さじゃなくて何か意図しているような見た目になっているのがとても怖かった。映像に映っていたお札から核心に一気に核心に迫っていってとても重要なシーンだけあってインパクトがすごかった。
途中霊媒師が出てくるシーンがあって、主人公の瀬野の知り合いの霊媒師に意見を求めに行ったら恐怖のあまり取り乱して逃げるように喫茶店を出ていったり、見たら死ぬ映像を観てしまった大学生の除霊をしていた住職が途中で嘔吐したり、人間がどうにもできない大きな力を感じさせる演出は地味だけど好きだった。
実際に怪異に巻き込まれている人に合って怪異を収めた映像を観たり、住職の言うとおりに生き物を絶え間なく飼い続けていて異様な雰囲気の家になっていたり今まで細切れだった恐怖が一つにつながって行って不気味な怖さがあった。
失踪した編集者の家もめちゃくちゃで怖かったし、奥さんの暴れまわり方もかなり怖かった。核心に触れてしまった人が生きるのあきらめたようなセリフとともに自殺するのも怖かった。
瀬野が失踪した編集者の家を訪れるちょっと前くらいから急に高圧的になったり強引になっていって憑りつかれた小沢をビンタ一発で除霊したり、原因の石を壊すとか言って当たり前のようにバールを持ってきたり、しまいにはトンネルで赤い女の例を車で轢いたりしてちょっと流れ変わってきたなってなった。
明らかに瀬野がおかしいがそのラストのシーンで明かされて納得できたし、失踪した編集者のセリフの意味も分かってスッキリしたがもう少し何かきれいに終わらせられるんじゃないかとも思った。最後、動画を観ている第三者に呪いが向くように瀬野が映像を撮っていたっていう感じで終わった上に瀬野の顔が少しずつ崩れていくのが不気味でよかったが、赤ちゃんのクトゥルフ的な演出は蛇足だなって思ってしまった。
エンディングテーマが椎名林檎で終わり方に合っていてエンドロールの余韻がすごかった。